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路地物件は、意外にも自由度が高くて“使い道”が広がるユニーク住宅に化ける?

路地物件#1 伊達大さん宅
「静けさのある路地裏は、趣味の坐禅に最適でした」

最初に紹介するのは、西陣エリアの路地にひっそりと佇む町家を購入し、リノベーションした伊達大さんのお宅。大学進学を機に京都に来て以来、19年ほどマンション暮らしを続けてこられました。現在は美容院「haku」のスタイリストとして市内中心部で働く傍ら、「身近な人にお酒を提供できる場に挑戦してみたい」という野望を胸に、路地奥の中古物件の購入と改修を決意したのだそう。

車通りの多い千本通を西に入ったところ、いかにも路地らしいトンネルを潜った先に立ち並んだ建物のひとつが伊達さんのお家。路地奥に現れる全面ガラス戸の外観が特徴的です。

【基本情報】
住み手:30代、一人暮らし
エリア:西陣(千本一条あたり)
築年数:不明
土地・建物代:約1,500万円
改修費:約1,500万円(リノベーション)
延べ床面積:約66平米

—— なぜこの物件を選びましたか? また、どのようにして物件と出会いましたか? 物件探しのコツがあれば教えてください。

最初は京都市内で3,000〜3,500万くらいのマンションを探していました。条件に合う物件がないわけではなかったんですが、便利さや効率を追求したマンションはどれも同じように見えてしまい、探すのをやめてしまったんです。
ある日、建築関係のお仕事をされているお客さまに物件を探していることを伝えたら、すぐにこの物件を紹介してくださったんです。細い路地に入っていくアプローチの感じと、建物の感じに一目惚れでした。

「いえ屋」という古い建物を専門的に扱っている不動産屋さんの管理物件だった。

—— どのようにリノベーションしましたか? こだわったポイントがあれば教えてください。

リノベーションは、物件を教えてくれた建築士さんにお任せしました。要望したのは、畳。土間とキッチン以外の部屋はすべて畳なんですよ。もともと坐禅が趣味でお寺巡りをしていたのですが、いまは家の中で、庭を眺めながら坐禅を組んでいます。おかげでここに来てから家にいる時間が長くなりましたね。

離れがあった部分は取り壊して庭に。あえて機能的ではない余白をもたせることで、路地奥とは思えない開放感のある空間に。

畳が無かったのもマンションに心が動かなかった理由のひとつでした。この家は、路地の静けさも相まって坐禅すると、すごく心が落ち着くんです。
あと、建物の西側の土壁や漆喰は、剥がれかけていたのですが、この色や風合いがかっこよかったので、あえて何もせずそのままにしました。

建物西側の壁。傷んではいるが、物件見学の際に、新築のクロスには出せない風合いに惹かれたという。
西側の壁を見上げると、京町家らしい火袋と天窓。炊事の際に熱気を逃す京町家ならではの工夫だが、吹き抜けとして採光を図る機能も果たしている。
トイレや洗面スペースと間仕切る引き戸は、建物のもとの壁色と調和することを意識した。本来は、壁の内側に使われる素材をあえて設えとして見せている。

—— 路地=狭い・暗いといったネガティブなイメージもあると思いますが、快適に住むための工夫があれば教えてください。

路地物件らしいことといえば、この建物にはお風呂がなかったことですかね。一般的には、お風呂は家の奥につくることが多いと思うんですが、思い切って路地に面したところにお風呂場をつくりました。カーテンを開くと路地からお風呂場が丸見えなんです。笑

路地に隣接したお風呂場。そもそも人通りが少ないことも、思いきった間取りにできた理由だそう。

水回りをイチから新設する必要があったので、なるべく水道や排水を路地に近い位置にして、1箇所にまとめたほうが工事費も安く済むとアドバイスをもらったので、今の場所になりました。

1階の中央部に構えたダイニング。左手のガラス面がお風呂場で、全面ガラスの路地側からお風呂場を抜けて、室内やキッチンに光が入る構造に。
キッチンの上から庭側を望む。バーのような一枚板のカウンターは、親しい人を招いてお酒を飲むことが好きな伊達さんの考えを形にした。
部屋と部屋のあいだを暖簾で仕切るなど、必要以上に壁をつくらず、空間をゆるく繋げることで圧迫感をおさえ、かつ採光しやすい間取りになっている。

—— 一般的な建物より、路地内の住民同士の距離が近いと思いますが、路地生活ならではのエピソードがあれば教えてください。

前はマンションに住んでいたのですが、そのときも他の住人の方に会ったら挨拶はしていましたし、ご近所付き合いの感触としてはその頃と正直そんなに変わらないです。気をつけることとしたら、人が集まったときの声のボリュームくらいですかね。
隣家に面した壁には防音対策も兼ねて、ガラスで区切った収納スペースを新設。壁と室内の間に、空気層となる収納スペースを設けることで遮音に役立っている。

—— 路地奥に住んでから気づいたことがあれば教えてください。 

古い建物なので暑さへの対策でしょうか。はじめての夏を迎えて、エアコンはもう少しパワーのあるものにすればよかったなあと思いました。

—— これから路地物件に住む方・探している方へのアドバイスをお願いします。

遊びに来てくれる若い人たちには「何か不便なことってありますか?」とよく聞かれるんです。断熱や収納など効率のいいマンションに比べると、ないものも多いですしね。けど、若い頃っていろんなものを手放すことに対して不安を感じるんだと思います。僕もすごく荷物が多かったんですけど、ここへの引っ越しのタイミングで整理しました。何かがなくなったらまた新しいものが入ってくる、と思っているので、僕はいまの暮らしが好きですね。

「年月を経て木の色合いが変化していくのも楽しみで、時の流れに身を任せて、家と一緒に歳をとっていく感じでゆるっとやっていきたい」と伊達さん。

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「ほぼ全面土間だから、
レストランみたいな感覚で人を呼べるんです」

credit:

企画編集:合同会社バンクトゥ光川貴浩、窪田令亜

企画協力:水迫涼汰

撮影:光川貴浩

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