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京都市
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【前編】「空き家あるある」—入り口としての「空き家あるある」

多くの人にとって関わりのある、あるいは将来かかわらざるを得ない「空き家」。当事者になるまでは、どうしても遠い存在になってしまいがちな「空き家」。そんな「空き家」にかかわる、様々な立場のプロの方々にリアルな「空き家あるある」のお話をしてもらいました。

前編では、不動産屋さんや、建築士さんといった、「空き家」をイメージしたときにすぐ思い浮かぶ職業の方々から「あるある」を話していただきました。

INDEX

不動産のプロに聞く「空き家あるある」その1

まず最初にお話をうかがったのは、京都市の空き家相談員として日々物件所有者さんや住まい手のみなさんと向き合う不動産屋、株式会社白地図の山村允人(まさと)さん。空き家にまつわる、実体験だからこそのリアルな「あるある」をお聞きすることができました。

山村允人(まさと)さん
https://akiya.city.kyoto.lg.jp/counselor-list/25-037

あるある01 「空き家、時間経ちがち」

山村さん「空き家の所有者さんと話していていちばんよく耳にするのが『そのうちどうにかしようと思っていた』という言葉です。仕事が忙しかった、子育て中だった、プライベートな事情があった。それぞれ事情はあるでしょうけど、手が空いたときには、すでに数年・数十年が経過していることも少なくありません。

『もっと早く動けば』って所有者さんご自身もよくおっしゃるのですが、本人もわかっているんですよね。近場にある空き家ほど『いつでも行けるから後で』となりがち。遠方の方が『どうせ管理できないから』と早めに決断するケースが多いというのは、意外な逆説です。」

あるある02 「空き家に猫やハチ入り込みがち」

山村さん「空き家になったところに蜂の巣ができて、お隣さんから『うちに蜂が飛んでくるので対処してくれ』とクレームが来る、というパターンはよくあります。蜂の巣は空き家になってからの時間はあまり関係なく、すぐ発生することもあります。

他にも、窓ガラスが割れた状態で放置された空き家に小動物が侵入する、ということもあるあるです。」

あるある03「隣地とトラブルなりがち」

山村さん「蜂の話もその一つですが、隣地とのトラブルもあるあるです。草木の繁茂に関するトラブルが特に多い。他には、隣地との境界ギリギリに建っていた空き家の屋根が隣に落ちる、境界を超えて植物がとなりの敷地に入る、などなど。空き家になることで隣地とのトラブルにつながりがちです。『隣の空き家にあるプロパンガスのボンベ、爆発しない?』と相談があることもあります。確かに不安ですもんね。」

あるある04「空き家、ゴミ屋敷になりがち」

山村さん「空き家に残置物があるのは珍しくないですが、『足の踏み場がないほど、荷物や生ごみなどが埋まっていて……』という物件も。残置物の処分費用は意外と高く、『価値があると思っていた着物や絵画が、査定してみたら数千円』ということもよくあります。」

あるある05「譲れない価格、ありがち」

山村さん「オーナーさんが周辺の相場より高い価格を希望して、何年も売れないままになるケースも。『まあちょっと2,000万で売りに出してみてよ』と。売れないままずるずると続くと…その間にも物件の価値は下がっていきます。」

まず不動産のプロ山村さんに聞く5つの「あるある」でした。「処分がしづらいものであればあるほど、早めに動いた方が絶対いい。価値は下がる一方ですから。」と山村さんは語ります。

ところが、いざ相談しようにも不動産業者も色々で、残念ながら悪質な事業者も存在しているそう。相場が1,000万円の物件を200万円で買い取って、何もせずに1,000万円で売る、といったケースもあるそう。そうした極端なケースのみならず、「不動産屋に行くのは、ちょっと怖い」というイメージも、まだまだあるのではないでしょうか?

山村さんは、「ご自身が納得できないときや不安な場合は、京都市の空き家相談員制度を使ったり、複数の業者に査定を依頼したり、セカンドオピニオンも大切ですね」と語ります。

不動産のプロに聞く「空き家あるある」その2

やはり空き家のことは不動産屋さんにおうかがいするのが一番です。同じ不動産屋とは言え、場所や人が変われば視点も変わります。

西賀茂を拠点にする、「株式会社OPEN SESAME」の麻生義彦さんに「あるある」を聞いてみました。

麻生義彦さん
https://akiya.city.kyoto.lg.jp/counselor-list/25-002

あるある06「一体、所有者は何人いるの…?」

麻生さん「数代にわたって相続登記が未了だった場合、世代交代により相続人が増え、話し合い(遺産分割協議)が困難になりがちです。権利のない配偶者や遠く親戚などの意見に振り回されて、話がこじれることもあります。

歴史ある京都では先祖代々の土地家屋を守り、そのまま住み続けたり管理したりすることも多いため、何代も前から登記を放置しているケースも少なくありません。 所有者が明治の高祖父のままだった!!なんてことは、京都ならではの『あるある』かもしれません。」

あるある07「再建築が難しいと言われ、驚きがち」

麻生さん「建築時や購入時には指定されていなかった、土砂災害警戒区域・特別警戒区域や風致地区に後から指定されると建物の建築や増改築に制限がかかり、費用面や再建築できる建物の大きさから実質的には再建築不可といえる物件も多いです。

土地の大きさや立地条件などによっては、売却価額に影響がでることがあるので『そんなことはないはず』と現実を受け入れがたいオーナーさんも多いですね。」

あるある08「更地にするか古家付きの売却か、悩みがち」

麻生さん「前道が広く、整形な土地は解体して更地にしてしまった方が、買い手が見つかりやすい傾向があります。しかし、空き家が建っているままであれば、買い手が購入後にリフォームなどをして住むか解体するか選択することが可能になります。解体すると、購入者が限定されることもあります。先ほどのお話にも結び付きますが、再建築が難しいような土地は、安易に解体しないよう要注意です。」

あるある09「仲介での価格と業者買取価格の違いを誤解しがち」

麻生さん「中古車の査定システムと混同して考える売主様が多いと思うのですが、車は査定をした会社が買い取りますので査定額=買取額。オークションは仲介に近しいと考えますが、一般的な中古車の売買において、仲介というシステムはありません。

不動産売買の場合、時間に比較的余裕がある方は、一般の方(エンドユーザー)に売却するほうが、売却価格が高くなるので仲介をお勧めします。残置物が沢山あるなど、一般の方に売却するまでの手間がかけられない、時間も無いような方は、安くはなってもリスク込みで買い取ってくれる業者買取になるケースが多いですね。」

あるある10「査定金額=販売価格と勘違いしがち」

麻生さん「実は、販売スタート価格は売主様が自由に決められます。査定価格はアドバイスの価格なので、希望があるなら伝えてほしいですね。もちろん、相場より高すぎると売れないまま時間が過ぎるので、半年程度で売却出来なければ値段の見直しが必要だと考えています。

『思い出が詰まってるのに……』築30年以上経過した建築当時の資料も無いような木造の建物は、市場での評価(価値)がほぼゼロと言われてショックを受けるオーナーさんもいらっしゃいます。建物の状態にもよりますので、必ず評価が付かないということではないですが、適正な価格で売却するのが実は一番良い結果に結びつくと感じます。」

自分が持っている物件がいくらで売れるのかを知りたいとき、見積はウェブ上でも簡単に取ることができます。ところが、「一括査定ボタン」を「ポチッ!」と押した瞬間、急に色々な業者から怒涛の営業連絡が入ってくることもしばしば。しかも査定金額がバラバラすぎて迷走にはまりがち。

とにかくいろんな人がそれぞれの経験談を話してくださるので、「何が正しいのか」がわからないまま泥沼に沈みがち。そんなときは、ぜひ京都市の相談員制度を利用しながら、信頼のできる不動産屋さんを見つけてみてくださいね。

建築士さんに聞く「空き家あるある」

不動産屋さんお二人に聞くだけでも、「空き家ではこんなことがよく起こっているのか……」とビックリします。

ここでちょっと視点を変えて。購入した空き家に、あらたに住む際に頼る建築士さんにお話を聞いてみましょう。壬生を拠点にする「株式会社谷元工務店」の谷元正治さんにお話をうかがいます。

リフォームやリノベーションをしようと思ったときに、思わぬ落とし穴が潜んでいた「あるある」です。

谷元正治さん

あるある11「長年の間に増改築が繰り広げられがち」

谷元さん「本当によくあるんですが、床や壁をめくってみたら思ったよりも傷んでいた、というのはあるあるですね。共用の通路部分に増築しちゃってるとか、隣家との間にあるブロック塀を勝手に壁として部屋をつくってしまってるとか。平屋を2階建にするなんて思い切った増築なんかもあります。

増築をしたつなぎ目の部分が問題になるのが、またあるあるで、雨が漏ったり、地震のときの弱点になったりしがち。傷みにすぐに気づけばまだいい方です。店舗として貸していて、借主も住んでいないから全然気づかないまま傷みが進行し、改修しようとしたら、柱や梁がボロボロスカスカになっている!!ということも珍しくありません。」

めくってわかる柱梁の状態

あるある12「図面、なくなりがち」

谷元さん「増改築が繰り返されるということと、割と関連するんですが、空き家に図面が残ってるっていうことはほとんどないですね。仮に建築当時の図面が残っていたとしても、現状とまるで違う、ということもあるあるです。現況の図面が無ければ、しっかりとした改修計画は立てられないので、先ずは図面の作成からということに。わたしも空き家相談で現地に行かせてもらうことがあるんですが、図面はその1時間くらいの間にササッと描けるようなものでもないし、その場での提案はなかなか難しいところです。」

あるある13「改修の無理な相談されがち」

谷元さん「お客さんに言われて困るのが『ここだけなおらへんの?』ということ。壁面が浮いてきてしまってヒビが入っている場合、実は壁一面に雨水が入り込んで傷んでいるということもよくあります。ひどければ、建物のいたるところに水が回っていることも。でも、一般の人にとってはわからないので『ヒビ入ってるここだけ、なおらへんの?』と言われてしまうんですよね。

見える傷みは氷山の一角なんてことはあるあるです。」

あるある14「思ったより甘く見がち」

谷元さん「最近まで前の所有者が住んでいたし、さほど手を入れなくても大丈夫だろう、と割と甘く見られる方が比較的おられるのもあるあるですね。でも、ちょうどメンテナンスが必要な時期だったりで、居住前にしっかり点検しておけば良かったなんてことも。古民家を改修したカフェに行ってみたら、耐震的に必要な壁がなくなり、必要な柱も切られてる!!みたいに、建築士としては、『これはちょっと危ないぞ』と思うこともあるあるです。もちろんDIYで壁を塗る、棚をつくるくらいは良いのですが、主要構造部に手出しするのは推奨できないですね。」

あるある15「見積難しくなりがち」

谷元さん「建築士(工務店)として、空き家の改修の何が一番難しい?と聞かれれば、『見積が難しい』ですね。もちろん空き家のみならずですが、床や天井、壁を実際にめくってみないと本当の状況はわからないですし、実際めくってみても後になって『こうなっていたんか!』と驚く施工に出会うこともあるあるです。やってみないと分からない、というのが本音のところですが、見積を出さないわけにはいけません。昨今、資材が急激に値上がりしていますが、『後から追加費用でがち』というわけにもいかないので、いつも色々と頭を悩ませています。」

【コラム】
「インスペクション」と「京都市の無料耐震診断」

建築士などの専門家が住宅の状態を客観的にチェックするのが「インスペクション」です。費用がかかります(調査範囲や内容にもよりますが、概ね10万円程度)が、買い手の「見えないリスク」への不安が消え、正しい評価につながるため、売り値が変わる場合もあります。欧米に比べるとインスペクションを受ける方は少ないですが、「早く、値引き交渉などを受けずに適正な価格で売りたい売主さん」や「購入後のリスクを最大限に減らしたい買主さん」を中心に、少しずつインスペクションをおこなう人が増えてきていると思います。

一方で、京都市の場合は無料の耐震診断(対象となる建物の要件有)もあります。インスペクションのように売却価格には変化があるというものではありませんが、お住まいの方が安心して住み続けられる、あるいは人の手にわたる前に、現状を把握するために活用されることが多いようです。空き家を生み出さないためにも大事な仕組みです。

「うちは棟梁さんを抱えています。今では案件ごとに大工さんを集めるという会社さんも多いですが、先代がよく言っていた『職人さんを大切に』を守っています。それに、お客さんがお住まいになっている中、工事させてもらうこともよくあるんですよね。そういうときには人となりを知っている職人さんにお願いした方が安心ですよね。」

と、語る谷元さん。拠点とするエリアにも昔ながら物件が多く、工事もなかなか大変そうですが、お客さま第一で語る姿勢がとても印象的でした。

「空き家対策としては、まず耐震診断をしてみたり、身近な工務店さんがおられるようなら、そこにチェックだけでも相談してみたらどうでしょう?」とアドバイスもありました。

「空き家あるある」、前編はいかがでしたか?すでに経験されている方にとっては「自分にも思い当たるふしがあるな……」と共感してもらえたら、そしてこれからの方にとっては「そんなことがあるのか!」と気づきになってもらえたら、光栄です。

では後編では、不動産や建築といった「入り口」から一歩進んで、司法書士、空き家相談窓口担当、土地家屋調査士といった、動いてみてわかる「空き家あるある」をご紹介したいと思います。

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企画編集・執筆:榊原充大(株式会社都市機能計画室)、望月姫子(Kyoto Dig Home Project)

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