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【後編】「空き家あるある」—動いてみてわかる「空き家あるある」

多くの人にとって関わりのある、あるいは将来関わらざるを得ない「空き家」。当事者になるまでは、どうしても遠い存在になってしまいがちな「空き家」。そんな「空き家」にかかわる、さまざまな立場のプロの方々にリアルな「空き家あるある」をお話をしてもらいました。

前編では、不動産屋さんや建築士さんといった「空き家」をイメージしたときにすぐ思い浮かぶ職業の方々から、いわば入り口の「あるある」を話していただきました。

後編では司法書士さん、空き家相談窓口の担当でもある行政書士さん、そして土地家屋調査士さんといった空き家にまつわる職業の方々に、実際に動いてみた後にわかる「あるある」をお話いただきました。

INDEX

行政書士さんに聞く「空き家あるある」

後編最初に登場いただくのは、京都市の空き家相談窓口での対応もされている、行政書士の栁川照道さんです。

行政書士とは、市役所などに提出する許認可書類の作成や、遺言書、契約書といった書類の作成などをおこないます。空き家との接点は相続をはじめさまざまにあります。

「最近では空き家の管理をおこなう行政書士さんもいるんですよ」と栁川さん。行政書士として、窓口業務を進めるなかで出会う「空き家あるある」を教えてもらいました。

栁川照道さん
http://gyouseisyosi.xsrv.jp/

あるある16 「『いくらで売れるか知りたい』と相談されがち」

栁川さん「みなさんやっぱり、価格に関心がありますよね。相続人のみなさんは基本的にすでに住まいをお持ちなので、相続した土地建物は不要。売ったお金を相続人同士でわけたい、というわけです。管理したいんだけど、どうしたらいいか?活用できるか?売りたいわけではなので貸せるか?といった相談もよくあります。案内の仕方としては、京都市には専門家派遣制度があるので、そちらにつなぐことが多いです。」

あるある17 「確定申告に必要な”確認書”すぐに発行できると思われがち」

栁川さん「馴染みのない方が多いと思うんですが、実はこれ(被相続人居住用家屋等確認書の発行について)が窓口で受ける相談としては一番多いですね。要点を絞って説明すると、被相続人がひとりで居住していた家屋とその敷地を相続又は遺贈で取得した相続人が、その不動産を売った場合に、その譲渡所得から3,000万円を控除できる(通称:空き家の3000万円特別控除)特例があるんですね。そして適用を受けるには、市区町村で発行される被相続人居住用家屋等確認書が必要になるので、それを発行して欲しい、という相談ですね。

対象となる要件を説明して、適合しているのかを国税庁のチェックシートに沿って確認していきます。特別控除の対象になると思われる方は、確認書発行のための必要書類のご説明をします。申請したら、すぐに確認書が発行されると思われがちなんですが…申請書類をそろえるのと書類審査に結構時間がかかるので、余裕を持って申請してください。」

あるある18 「補助金について聞かれがち」

栁川さん「補助金についての質問も受けがちです。2024、2025年度は不動産を売ったときの活用補助金で、仲介手数料の一部が補助されるというものや、解体費を一部助成する補助金がありました。
2026年度には、同じ補助金はなくなったのですが、京都市の防災まちづくり推進事業の対象となる区域では、解体の補助金が使える場合もあるのでそちらをご案内したり、みやこ安心すまいセンターの耐震・防火改修補助金をお伝えしたりということもありますね。」

あるある19 「『行政やから、何とかできるでしょ!!』とご近所さんからの”通報”ありがち」

栁川さん「隣の空き家に困っている、という相談もあるあるですね。『隣の枝木が越境しているからなんとかしてもらえないか?』『瓦が落ちてきている。子どもたちも通っているので、所有者にすぐに改善するよう指導してほしい。』などです。

管理不全空家であっても、京都市から個人の所有物に介入するのは、本来、容易なことではありません。『何かあったら京都市の責任だ!!』と語気を強める方もおられます。一方で、『聞いてくれただけでよかった』という方もおられます。相談は受けるけど、京都市がすべてを解決できるわけではない、というのが実情ですね。」

あるある20 「『京都市になんかお得な物件あるやろ』と思われがち」

栁川さん「京都市版空き家バンク『京都安心すまいバンク』のウェブページもありますから、その相談も最近は多いですね。とりわけ借り手側が多いです。ホームページに掲載されている特定の物件についての問い合わせもありますし、『他にも物件あるやろ?』という相談もありますね。お値打ちの物件情報を京都市は持っているのでは、と思われているふしも感じます。価格が安い物件は、郊外であったり、かなりの修繕が必要だったりと、何か理由があるからであって、『京都市だけが把握しているお得物件』なんて、都合のよいものはありません。
ちなみに京都安心すまいバンクに掲載している物件は、住居として利用することが前提条件になっていて、海外から問い合わせが来ることもあります。」

空き家相談窓口担当であり、行政書士でもある栁川さんの「空き家あるある」でした。

単刀直入に「空き家にしないためには、どうしたらよいのでしょう?」と尋ねてみると、相続する前からの対策が重要だと仰いました。

「行政書士としての仕事柄、遺言書の作成もよくしますが、物件を渡す側は、自分の意思としてどの不動産を誰に譲るか、を具体的に示し、それだけでなくその理由をしっかり話しあっておくべきですね。欲しくない物件をもらっても、相続人の方が困ってしまいますし。」

それから、不動産は共同名義で持つのではなく、単独名義にした方がよい。なぜならお金は分けやすいが、不動産は分けられないから、など、具体的なアドバイスがありました。

司法書士さんに聞く「空き家あるある」

次に登場いただくのは「司法書士」。法律に係わる専門職として、「行政書士」と混同されがちな「司法書士」。京都市内を拠点にしている司法書士、上玉利磨生(かみたまり・まき)さんにお話を聞きました。

司法書士とは、不動産や会社の登記・供託手続きなどの代理や、裁判所や法務局に提出する書類の作成などを担う法律の専門家。「空き家」とは登記のみならず、相続手続きなどでも密接に関わります。時には不動産屋さんと連携して、「誰が本当の所有者か、所有者がどこにいるかわからない」などという場合に、あの手この手をつかって調査する、ということもあるようです。

以前は宮崎を拠点にされていた上玉利さん。司法書士としての視点はもちろん、宮崎と京都の比較からの「空き家あるある」も教えてくださいました。

あるある21 「相続の迷宮になりがち」

上玉利さん「空き家をいざ売ろうと思ったとき、最初にぶつかる壁のひとつが相続関係の複雑さです。相続人が多いというパターンもありますし、思わぬ相続人が表面化するということもありますし、相続人が高齢化している、あるいは所在がわからなくなっていたり海外にいたりとさまざまなパターンがあります。当然ながら、見つかっていたとしても必ず協力してもらえるわけではありません。

わたし自身、長年続けている案件もありますが、所有者さんが自費で高いお金を負担して相続関係を整理しても、その労力に見合う高い金額で売却できる物件ばかりではありません。これが空き家が増える原因になっている部分もあるなと感じます。」

あるある22 「相続登記、忘れがち」

上玉利さん「2024年4月1日より、相続登記の義務化がされました。不動産の取得を知った日あるいは遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をすることが法律で義務付けられました。実際に相続登記の相談は増えましたが、まだ知らない方や、後回しにされたりで忘れられがちです。

相続登記しようにも相続人が多くて全員の協力が得られないケースもあれば、司法書士にお願いしたいけどお金がない、自分でやろうにも時間がないなど、さまざまな状況があるんですよね。

当然ながら、長引けば長引くほど複雑化します。相続人が亡くなって、新たな相続問題に発展してしまうこともあります。住所変更も含めて、こまめに登記しておいてほしいなと思います。」

あるある23 「相続のときに知らない不動産が出てきがち」

上玉利さん「宮崎にいるときに便利だったのが『名寄帳(なよせちょう)』というものです。これは、市町村が固定資産税の課税のために作成している『固定資産課税台帳』で、その自治体内に個人が所有し課税されている不動産がまとめられたものです。

宮崎の場合は、課税されていない不動産も名寄帳に載っていたのですが、京都の場合は課税されていない不動産は載らないんですよね。ですので、名寄帳に載っていない不動産の相続登記をしていなかったということが生じます。現在は、2026年2月2日に『所有不動産記録証明制度』という制度が施行されましたので、相続時の財産の調査もれは徐々に改善されていくと思います。」

あるある24 「”お手紙”にびっくりしがち」

上玉利さん「危険な空き家の場合、ご近所さんから市に通報が入るんですよね。樹木が越境しているとか、瓦が落ちてきている、とか。市民への危険性が高い空き家等は市側も早急に是正に動くので、ある日急に京都市から勧告や指導の”お手紙”が届くことがあります。相続登記が長いことできていないと、法務局から相続登記を促す”お手紙”が届くこともあります。中にはその物件を自分が所有しているということ自体気づいていない場合もあるので、それはもう文字通り面食らうこともあるあるです。」

あるある25 「案外、国に引き取ってもらえない」

上玉利さん「相続土地国庫帰属制度という制度があるので、人によっては『自分で管理しなくても国に引き取ってもらえばいいでしょ』と思う方もおられます。ですが、そもそも更地にしないといけないので、その時点で大きなお金がまずかかります。他にも引き取りの条件があります。そして申請にも費用がかかります。それで絶対に引き取ってもらえる、というわけでもない。ですから、思っているよりも簡単なことではない、ということに気をつけた方がいいですね。」

司法書士上玉利さんに、当事者にならなければなかなか知ることのできない「空き家あるある」を聞かせていただきました。

司法書士の費用は案件ごとに決まっているため、先に挙げてもらったような「相続の迷宮」を長い時間をかけて解きほぐしても、報酬は変わりません。ですが、かかる実費は長くなっていけばいくほどかかってきます。

【コラム】
「相続放棄すればいいや」は要注意

相続放棄するからあとは知りません、ではいけません。管理をする責任は所有者にあります。それから、相続放棄をする場合、期間内に家庭裁判所に相続放棄をすることを申述する必要があります。

また、相続人が誰もいなくなった財産を処分するには、「相続財産清算人」の選任を申し立てる必要があり、その際には裁判所へ支払う「予納金」という費用がかかります。東京だと50、60万円から、京都だと70万円以上、上玉利さんが以前、働いていた宮崎だと40万円程度と、地域差もあるようです。少なくない手間とお金がかかってくるのです。

土地家屋調査士さんに聞く「空き家あるある」

後編の最後に登場いただくのは「土地家屋調査士」。建築設計事務所CAMPUSを運営しながら、土地家屋調査士の仕事も請け負う松岡篤さんにお話を聞かせていただきました。

土地家屋調査士は、不動産の「表示に関する登記」の専門家。土地や建物の所在、形状、利用状況を調査、測量して正確な図面をつくり、法務局への登記申請や筆界特定の代理をおこないます。不動産の現状の整理、売買、家屋の解体とさまざまな場面で関わるので、空き家とも密接に結びついた職業です。

松岡篤さん
https://campus-ad.jp/

【コラム】
土地家屋調査士はなぜ生まれた?

土地家屋調査士は、もともとは明治時代の「地租改正」がルーツ。税金を正しく課税するための「測量・調査」をする土地調査員として、大蔵省(現在の財務省)の管轄で始まった歴史があります。

戦後の税制改革を機に、税務署が管理していた土地・家屋台帳が法務局に移管され、「国民の財産(不動産)の表示を明確にし、登記の正確性を守る専門家」として、法務省の管轄で「土地家屋調査士」が誕生しました。非常に高い公共性と中立性を求められる国家資格であるため、土地家屋調査士の業務は株式会社、有限会社等は受託することはできません。法人化する場合は土地家屋調査士法人を設立する必要があります。

あるある26 「登記の内容、実態とズレがち」

松岡さん「長年にわたる増改築が繰り返された結果、登記簿と実際の状況が全く違う物件も珍しくありません。登記簿は木造平家瓦葺きですが、現況は木造2階建て鋼板葺き、という具合に。あるいは物置や車庫が増築されていることも。

これが原因というわけではないのですが、昔は確認申請書だけで住宅ローンが通っていたんですよね。確認申請書は提出された設計図が法令にのっとっているのかどうか確認するだけ。だから実情とズレがちなんですよね。今では完成した建物が提出された図面通り、かつ法令を守って正しく建てられたことを証明する『完了検査済証』と登記がないと住宅ローンは通らなくなってます。」

あるある27 「相続人が不明になりがち」

松岡さん「これは他の専門家さんも言うと思いますが、放置された空き家のように何代も経た建物は相続人の対象となる方が多く、連絡がとれない人が多くなりがちです。

土地家屋調査士としては、戸籍謄本を取り寄せて『相続関係説明図』というものをつくります。これがないと、『本当に権利を有する人か』がわからなくなってしまうからです。」

あるある28 「隣地からの越境物ありがち」

松岡さん「空き家は住人がいないため、隣地隣家からの塀や雨樋、樹木などの越境物があることが多いんですよね。荒っぽく言ってしまえば、木は切ることができますが、軒樋のような建物の一部はそうはいきません。越境物の撤去が難しい場合は、越境されている土地の側が、越境分をセットバック、つまりずらして建築しないといけないわけです。なかなかトラブルの原因になりがちです。」

境界指示

あるある29 「解体後の土地面積、ズレがち」

松岡さん「空き家解体後、土地を測量すると登記簿面積と異なるということがあります。依頼が来てから、資料調査、現況調査、ヒアリングなどして境界を確定するわけですが、現況からはわからない、資料からもわからないという場合もあります。その際に、所有者、隣地所有者、調査士で境界確定の立ち会いなどをおこなうのですが、それでも決まらない、紛糾する場合には『筆界特定』というかたちで、法務局も立ち会って特定作業をします。それでも隣地所有者が納得できない場合は『境界確定訴訟』というものをします。境界は、必ずしもすんなり確定するわけではないから、ズレがちになるんですよね。」

測量の様子

あるある30 「後から出てくる人いがち」

松岡さん「相続問題は人と人の問題なので、一筋縄ではいかないことが多いんですよね。後から出てくる人もいがちですし、境界確定で揉めることもありがちです。土地家屋調査士が代理で利害関係者にお知らせに行くと結構揉めることが多いのですが、直接、所有者本人から伝えると問題ない、ということもあるあるです。」

税務署は現況優先であり、未登記の物件にも固定資産税はかかります。ただ、現況といっても、航空写真による計測や外観から調査・測定して課税面積を判断するそう。

「大きな吹き抜けがあるので、延べ床面積が70㎡のところを、外観上から100㎡とされてしまう、という場合もなくはありません。場合によっては、固定資産税を多めに払ってしまっているということもあり得ます。」

敷地境界点(赤丸)の間に水路が通っている

他にも、売却時に公図などを調べて初めて土地内に水路として使われていた土地があるということが判明する場合も。現状見えているだけではわからないことが、見えてくる、土地家屋調査士は大事な専門家だと言えるでしょう。

前後編でお届けしてきた「空き家あるある」、いかがでしたか?

本来身近にある「空き家」ですが、いざ自分が所有者になってみないとわからないことも多くあります。今回の「空き家あるある」で、「そんなことが起こるんだ!」「そんな仕組みがあるんだ」「じゃあこれに気をつけないといけないな」と、今後のための参考にしていただけると幸いです。

そしてぜひ京都市の空き家相談窓口(075-231-2323)や、空き家相談員さんによる不動産無料相談会、専門家派遣制度などを活用してみてください。

credit:

企画編集・執筆:榊原充大(株式会社都市機能計画室)、望月姫子(Kyoto Dig Home Project)

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