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京都市
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【相続&リノベーション】新築減少時代! プロと施主経験者に聞いた「工務店への頼り方」①

空き家や中古住宅(ユーズドハウス)を上手に活用し、自分らしい住まい方をしている方々を紹介する「空き家居住学」。今回ご紹介するのは、リノベーションのプロである工務店に依頼して中古住宅を生まれ変わらせた事例です。
「住宅価格の高騰で新築着工数が減少し、中古住宅のリノベーションが増えています」と語るのは、近藤工務店の代表・近藤正信さん。今回の「空き家居住学」で紹介するのは、築約50年の住宅リノベーション事例です。同じ規模・性能の住宅を新築で建てると、さらに2,000万円程度費用が高くなる可能性もあったのだそう。
新築するよりもお得に、愛着ある建物が、耐震性・断熱性を備えた快適な住まいへと生まれ変わった秘訣とは?
今回は、工務店と施主のお二人に「工務店と一緒に中古住宅をリノベーションするときの流れ」や「プロが見極めた中古住宅の価値」についてうかがいました。

INDEX

施主に聞く

実は築約50年! 相続物件を快適なすまいに

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基本情報
家族構成:60代ご夫婦+娘さん1人+息子さん1人
居住エリア:伏見区
築年数:約50年
改修費:約3,500万円
延べ床面積:約170平米
工事期間:約6ヶ月
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広々としたリビングは、もともと2つの部屋に分けていた壁を取り払って開放感のある一つの部屋に。そんなリビングを見渡すように設えられたキッチンは、ショールームで奥さまと娘さんが選んだものなのだそう。コンパクトな空間でありながら、動きやすいスペースと収納が確保された機能性抜群の台所に生まれ変わりました。

2階は3室の洋室とトイレ、階段を上がってすぐに納戸も設けられています。2階のすべての部屋に備え付けられた「出し入れできる物干し竿」は工務店からのアイデア。近年は洗濯物を外に干すのが不安な方も多く、重宝されているアイデアとのこと。

外観と同様に、建物の中までまるで新築のように綺麗に生まれ変わったKさんのお家。元々こちらの物件は奥さまの実家で、長らく伯母さまが住まわれていましたが、4年半ほど前に他界。それから3年程は空き家の状態でした。

Kさん

私たち家族はもともと、リノベーションを行ったこの家の隣に住んでいたんです。相続した家を空き家のままにしておくのもよくないし、隣にある私たちの住む家と相続した家をどうするか、2年ほど前から本格的に考えるようになりました。

ちょうど、Kさんご家族の住まいも築年数を重ねて傷みが気になってきた頃。ご家族の中では建て替えるか、リフォームするか、いっそのこと2軒とも手放してマンションに住み替えようか、という話も出てきていたそうです。

Kさん

でも、ここは駅も近くて便利ですし、長年住んでいるので地域コミュニティとの関わりも深いんです。だからやっぱりこの場所から移りたくないなと。もしリフォームをするのなら、伯母の家の方が広くてしっかりしているから、そちらに移り住んだ方がいいかなと。

多くの選択肢に悩んでいたときに思い出したのが、京都市の『市民しんぶん』で見た「京(みやこ)安心すまいセンター」の「すまい探し・リフォーム相談会」の存在でした。

すまいのワンストップ相談窓口「京(みやこ)安心すまいセンター」

京都市のすまいのワンストップ総合窓口(運営:住宅供給公社)。すまいの耐震化相談をはじめ、補助金などの支援制度相談など、すまいに関するあらゆる情報を提供しており、年に二度ほど行っている無料の「すまい探し・リフォーム相談会」では市の登録事業者である「安(あん)すまパートナー」に個別に相談ができる。

◎京安心すまいセンターHP :https://www.kyoto-jkosha.or.jp/sumai/
◎京(みやこ)すまいの情報ひろば :https://miyakoanshinsumai.com/

「安(あん)すまパートナー」

中古住宅のすまい探しやリフォームなどに詳しく、安心して相談できる市登録の事業者。
「すまい探し・リフォーム相談会」のほか、「安すまパートナー選定支援システム」を利用した事業者探しも可能。
◎安すまパートナー選定支援システム :https://sentei.miyakoanshinsumai.com/

工務店に聞く

リフォーム相談会で理想を計画にする第一歩

相談会の当日、Kさんが用意したのは自宅と相続した家の2軒の住まいの間取り図。古い家のため建設時の図面はすでになくしてしまっており、ご自身で作った手描きの間取り図を持参した上で、現在のすまいの悩みを打ち明けました。

Kさん

とりあえず一度専門家に相談してみようと軽い気持ちで申し込んだんですよ。そのとき、たまたま担当事業者として出会ったのが、近藤工務店さんでした。

PROFILE

近藤正信さん

株式会社近藤工務店 代表

近藤正信さん

「大工が正直につくる木造住宅」をキャッチフレーズに、木材や漆喰など自然素材を用いた家づくりを得意としている伏見区の工務店の二代目。京都市の「安すまパートナー」の事業者としてリフォーム相談員を務めるなど、京都市の中古住宅事情やリフォームに詳しい専門家でもある。
https://www.kon-hb.co.jp

相談会で新しい住まいの希望として近藤さんに伝えたのは「耐震性」「暑さ寒さの改善(断熱性)」「2台分の駐車スペース」「広いリビング」「リフォームの場合は仏間を残す」という5つのポイントで、それ以外の細かなこだわりはあまりなかったのだそう。そこで近藤さんはまず、現在の家の状態を確認するために現地調査を提案。

近藤さん

現場を見てみると基礎や柱が傷んでいたり床が傾いていたりしてリフォームができないかもしれませんし、自分たちの目でしっかりと調査をしてからリフォームできるか建て替えの方がいいか判断したいとお話ししました。その時点で発生する費用は現地調査費のみです。現地を見てからプランニングをして、家のイメージを擦り合わせていき、その後工事費用のお見積を出して、正式な契約をする流れです。

現地調査を通して明らかになったのは、伯母さまの家は非常に良質な構造材が使われているということ。

近藤さん

立派な木が使われていて、これは潰すのはもったいないと思いました。ぜひ建て替えではなくリフォームにしましょうとご提案したんです。

二人に聞く

プロのアドバイスを信頼してフルリノベを実現

元のお家では、伯母さまが長年一人で住まわれていたことから、高齢者が安全に暮らせるようにお風呂やトイレなどの水回りの設備が玄関の近くに配置されていました。そこで、Kさんからの要望である「広いリビング」と「2台の駐車スペース」を実現するため、1階は部屋数を減らしてお風呂やトイレなどの水回りを総入れ替えし、生活動線も作り変えることに。

基本的な耐震と断熱工事を施すとともに、寒さが苦手な奥様のご要望で1階には床暖房も設置。さらに耐震性能を上げるために屋根瓦を軽量のものに葺き替えることにしました。

これらの要望を実現する際に心配になるのがお金の問題。特に屋根瓦の葺き替え工事はリフォーム費用の中でも大きな割合を占める部分であるため、実施を迷われる方も多いのだそう。

近藤さん

家自体が50坪近くの大きさですからね。予算が限られていると、瓦の葺き替えは後回しにされることが多いんです。しかし今回の場合は軽量の瓦にすることで耐震性能が上がりますし、他の工事と一緒にやってしまった方が後々安心ですとお伝えしました

Kさん

当初リノベーションの予算は2,000万円ほどで考えていましたが、仏間のある和室を除いてフルリノベーションになったことや広い駐車スペースを作るための外構の工事を含めると3500万円近くにまで膨らみました。正直お願いするかためらう金額でしたが、中途半端な工事は良くないなと思い、すべて近藤さんにおまかせすることにしたんです。何より、義父が建てた大切な家なので、綺麗にして住めるならそれに越したことはないなと。

近藤さん

お金の面ではさまざまな補助金制度もありますが、それを利用するためにかかる手続きや申請が通るまでの時間を考えると利用しないで進めた方がいい場合もあります。今回は断熱性能を上げるために『窓リノベ*』を活用していますが、そういった補助金の利活用についても提案させていただいています。

*『窓リノベ』についてはこちら

着工までに両者が近藤工務店事務所で打ち合わせを行った回数はわずか3回。少ない回数の中でも、残すべきもの・残さないもの、といった的確な判断をしていった近藤さんの意見に納得し、全幅の信頼を寄せたとKさんは話します。

近藤さん

一般の人が図面を見ただけで何もかも理解するのは難しいんです。いくら図面で何度もやり取りをしても実際に現物を見ると違うとなることもあります。だから、大まかなプランは事前に決めても、細かなところは工事を進めながら詰めていく方が実感してもらいしやすいんですよ。その点、Kさんはリフォーム現場の隣にお住まいなので、要望を聞きながら進めやすかったですね。

その上で、キッチンやバスルームなどの設備選びの際には近藤さんもショールームへ同行するなどしてご家族の好みを把握。クロスや床材の選定に至ってもほぼ「近藤さんにおまかせするわ」と言われるほどの信頼関係ができていったそうです。

もしも新築だったら……いくらになった?

2025年の春ごろにリノベーションを終え、現在引っ越しの準備をされているというKさん。よみがえった住まいの感想をお伺いすると、断熱性能が上がったことで電気代が抑えられているなど明らかな違いと満足感を感じている一方で、少し後悔していることもあるとのこと。

Kさん

強いて言うなら唯一残しておいた仏間のことが少し気がかりです。全体的にここまで綺麗にしていただいたので、こちらも一緒に工事をしておいた方がよかったかな、という気持ちもあります。将来の宿題ですかね。

今回の工事では仏間以外のすべての部分のリノベーションが行われましたが、近藤さん曰く同規模で同じレベルの断熱・耐震性能を持つ住まいを新築で建てる場合は基礎工事から必要になるため、さらに2,000万円程度必要になる可能性があるのだそう。

近藤さん

Kさん邸はもともと使われていた構造材が良質のものであったので、生かせるものは生かしながらリノベーションを行いました。古い家=材質も良くないと思われる方も多いのですが、今回のように50年以上前の建物の場合は本当に良い構造材を使っていることが多く、潰すともったいないケースもあります。私たち大工の目線でみると、日本の住宅需要が急増した時期に、いわゆる「新建材」という安価な木材が使われるようになったのですが、それ以前につくられた家の場合、いまでは到底手に入らないような良い材が使われていることも珍しくありません。

今回のリノベーションに合わせて家具も新調。生まれ変わった空間に合わせて温もりのある木のテーブルと椅子をセレクト。

近藤さん

弊社では以前は新築が中心でしたが、材料費の高騰などもあり最近はリノベーションの依頼が多くなりました。実際に仕上がった家を見ていただいても分かるように、一見新築のように見えますし、耐震・断熱性能も新築同様のレベルですから、中古住宅のリノベーションへの理解や関心が深まっているのでしょう。予算の問題だけでなく、やはり長い時間を過ごした愛着のあるすまいを残したいと考えられる人も多いですね。

Kさん

リノベーションを実際に体験して、やはり工務店さんとのコミュニケーションが大事だと思いましたね。私たちは行政がやっている窓口を通して知り合ったので最初から安心感を持って相談することができましたし、実際にこちらの要望にも丁寧に対応してもらえましたから。

数多くの物件を手掛けてきたプロだからこそ見えてくる、中古物件の最適な姿と家族の思い。それらがうまく合わさったとき、さらに長く愛着の持てる快適なわが家が実現するのかもしれません。

credit:

企画編集:合同会社バンクトゥ 光川貴浩、窪田令亜

執筆:河合篤子

企画協力・写真提供:近藤工務店

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